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2026年9月25日(金)より全国公開される

映画『ナギダイアリー』

世界が注目する俊英・深田晃司監督が、企画立ち上げから9年の歳月を費やして完成させた渾身の人間ドラマだ。

岡山県奈義町をモデルとした架空の町・ナギを舞台にした『ナギダイアリー』第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で「緻密で卓越した脚本」と絶賛された深淵を紐解く。
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アウトサイダーの出現と、静かに波打つ心の余白

深田監督作品に通底するのは、「ある共同体に外部から侵入者がやってくる」ことで生じる変容である。
本作では、都会で建築家として働く友梨(石橋静河)が、別れた夫の姉である彫刻家・寄子(松たか子)の住む「ナギ」を訪れる。

このアウトサイダーの出現は、平穏だった町の日常に「小さな揺らぎ」をもたらす。
特に、自身のセクシュアリティに向き合い始めた中学生・春樹(川口和空)と圭太(藤原聖)の存在は、寄子が心に抱え続けてきた「癒えない喪失」や後悔を映し出す鏡となる。
カメラは「人の心は映らない」という監督の信念に基づき、説明過多な芝居を排した豊かな沈黙と、雨や木から生じる「音」の演出を通じて、登場人物たちの内面の震えを観客の想像力へと委ねている。
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ナギの風景に刻まれた、逃れられない人間の業

舞台となる奈義町には、広大な平野の美しさと同時に、自衛隊の駐屯地という特殊な側面がある。
日常的に響く砲声や道ですれ違う戦車といった「非日常の中の日常」は、都市と地方の非対称な関係性を象徴している。

また、深田監督は10ヶ月に及ぶ滞在取材の中で、長男が「僕は家を継がないといけない」と語るような、地方に色濃く残る家父長制や柵(しがらみ)のリアルを脚本に刻み込んだ。
一見すると平和な生活の裏側には、都会的な選択肢を持たない者の諦観や、コミュニティの中で不可視化されているセクシャルマイノリティの孤独といった「静かな悲劇」が横たわっている。
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平田オリザ戯曲の換骨奪胎と、深田晃司の作家性

本作は平田オリザの戯曲「東京ノート」を原案としているが、深田監督はこれを大胆に再構築した。
「東京ノート」が美術館という閉鎖空間での一日を描いた群像劇であるのに対し、『ナギダイアリー』は町全体をキャンバスとし、「彫刻家と建築家」という対比軸を導入している。

「物語を彫刻する」ように粘土を盛り、削り、新たな要素を加えていく監督の手法は、ジャック・リヴェットの『美しき諍い女』へのオマージュも感じさせる。
「映画に悪役はいらない」と断じる監督の人間観は、善悪の二元論を超え、状況によって揺れ動く人間の脆さを肯定する「究極の寛容」へと到達している。
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『ほとりの朔子』から続く、バカンス映画としての結実

過去作『ほとりの朔子』(2013)で、モラトリアムの中にある女性の夏を描いた深田監督。
本作もまた、その系譜を継ぐ「バカンス映画」の傑作である。

バカンス映画とは単なる観光映画ではなく、期間限定の非日常の中で、日常の閉塞感から自己を解放し、新たな「個」を見出すプロセスを描くものだ。

『ほとりの朔子』が少女の成長譚であったのに対し、本作は「孤独」という普遍的な悲劇を抱えた大人の女性たちが、他者との邂逅を経て、白紙の未来へと踏み出すまでを描く。
自転車で疾走する少年たちへエールを送る友梨の晴れやかな表情は、束の間の休息がもたらす「再生」の魔法を鮮やかに証明している。
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物語に生命を吹き込む、実力派キャストの共演

この重層的な物語を支えるのは、日本映画界を代表するキャストたちの好演だ。

野生味すら感じさせる「動物的」な感性で寄子を演じたのは、松たか子
主人公・寄子のチェーンソーを操る彫刻の所作に至るまで圧倒的な説得力を与えた。

抑制の効いた演技で不自由さを抱えた都会の女性・友梨を端正に体現したのは、石橋静河
「無理に距離を縮めない」寄子との絶妙な空気感が、作品に品格をもたらしている。

過剰さを削ぎ落とした「品のある芝居」で好浩を演じたのは、松山ケンイチ
監督の投影ともいえる不器用な人物を、愛すべきキャラクターへと昇華させた。

さらに、オーディションで選ばれた川口和空藤原聖が、アイデンティティの不確かさを「曖昧なまま」演じきったことも、本作の瑞々しさを担保している。
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「Nagi MOCA」という「サイトスペシフィック」

そんなキャスト陣に勝るとも劣らぬプレゼンスが、本作においては存在する。
単なる舞台装置、ロケ地の枠を超え物語に決定的な役割を果たしている、岡山県奈義町に実在する「奈義町現代美術館(Nagi MOCA)である。

前述した通り、平田オリザ東京ノート」は美術館を舞台にしている。
平田氏にとって美術館とは「他者と場を共有する装置」であり、絵画そのものを見(観)せるのではなく、絵を巡る「人々の揺らぎ」を映し出す鏡として機能していた。
深田監督はこの精神を継承しつつ、舞台を東京から地方へと移すことで、より重層的な物語を構築したのである。

ロケ地となった奈義町現代美術館は、1994年に竣工した世界でも類例を見ない施設だ。
世界的な建築家・磯崎新が提唱した「第三世代の美術館」の先駆けであり、建物と作品が半永久的に一体化した「サイトスペシフィック(特定の場所ならでは)」な構造を特徴とする。

深田晃司監督はこの建物を「長閑な景観に突然降り立った宇宙船」と評し、その強烈な個性に衝撃を受けて、当初の「東京を舞台にする」という企画を白紙に戻した(!)そう。
松たか子演じる主人公・寄子が画家ではなく「彫刻家」である理由も、この美術館との有機的な関わりから導き出されたものとか。
また、申瑞季が演じる学芸員・歌見の存在はアートと社会を繋ぐ媒体の役割を象徴し、川口和空藤原聖たちは「日常」として美術館で息づき、アウトサイダーとしての石橋静河を迎える。
そして、好浩(松山ケンイチ)の台詞から、美術館の存在自体が物語のテーマへ有機的に絡み合っていることが伺える。
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エンドロールに響く台湾の旋律

物語の終焉、観客の心に爽やかな風を吹き込むのは、台湾のシンガーソングライター イーノ・チェン(鄭宜農)によるエンディングテーマ「路邊開花」
作中でも友梨の仕事先として言及される「台湾」の記憶。
そのメロディは、ナギという特定の土地に根を張りながらも、同時に国境や慣習を越えてどこまでも広がっていく自由な精神を象徴している。

カレンダーがめくられ、日記(diary)が刻む時間は、果たしてどこへ向かうのか。
劇場の暗闇で、あなたも自分だけの「ナギ」を見つけてほしい――。

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『ナギダイアリー』

9月25日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか
全国ロードショー

松たか子 石橋静河
川口和空 藤原聖 藤間爽子 水間ロン 申瑞季
松山ケンイチ


監督・脚本 深田晃司

製作:四宮隆史 エグゼクティブ・プロデューサー:大野二郎 Guillaume Morel Jossette Atayde Maria Sophia Atayde Marudo
プロデューサー:大野敦子 長井龍 角田道明 コ・プロデューサー:小山内照太郎 Carine Chichkowsky 陈思恩 佐藤央
撮影:四宮秀俊 照明:加藤大輝 録音:益子宏明 美術:大月由香里 彫刻:吉田愛美
ヘアメイク:菅原美和子 スタイリスト:荒木里江 衣裳:渡部祥子 キャスティング:吉川威史
助監督:鹿川裕史 制作担当:山村亘 編集:Sylvie Lager VFX プロデューサー:平野宏治 カラリスト:Sorawich Khunpinij
音楽:李沛芩 リレコーディングミキサー:Olivier Goinard エンディングテーマ:イーノ・チェン
In association with mk2 Films 助成:Aide aux cinémas du monde ‒ Centre national du cinéma et de lʼimage animée ‒ Institut français,
文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会, White Light Studio, mk2 Films 後援:奈義町
製作:スターサンズ 八朔ラボ Survivance Momo Film Co. Nathan Studio ワンダーストラック 制作プロダクション:Lat-Lon
配給:スターサンズ

2026/日本、フランス、シンガポール、フィリピン/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/カラー/110 分/映倫区分:G

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

公式サイト:https://starsands.com/nagidiary
X:https://x.com/nagidiary_movie
Instagram:https://www.instagram.com/nagidiary_movie/